東京から島根へ。”独立”に挑戦し心の余裕も生まれた

地方の薬剤師

移住のメリットやデメリットは様々ありますが、実際のところは本人しかわからないもの。島根に移住して、調剤薬局の経営者となった東京生まれ・東京育ちの薬剤師・渡邉さんに、移住までの経緯と今の生活についてインタビューしました!

繋がりが繋がりを呼び、いまがある

編集部:大学卒業後から、新崎薬局に出会うまではどういった形で働いていたんですか?

渡邉さん:私は大学卒業後、東京の調剤薬局に就職しました。その後は、宮崎、茨城、東京と異動を経験し、キャリアアップを見据えて転職を検討していたところ、母親の地元の知人である前オーナーから島根の新崎薬局を継承する人を探しているという話を聞きました。

編集部:渡邉さんは、昔から新崎薬局を知っていたんですか?

渡邉さん:はい。新崎薬局は幼少期、長期休みで帰省した際に祖父に連れられ通っていた思い出のある薬局です。前オーナーは患者さんとの距離が近く、たわいのない話から体調に関する話まで、様々な話をする方で、その姿が脳裏に焼き付いていました。それもあってか、大学の進路選択は自然と薬学部を志したほど。薬剤師になるきっかけをくれた前オーナーのお店を継ぐことは、運命的な出来事だなと思い、迷いなくチャレンジを決めました。

島根では東京で培ったスキルが活かせる

編集部:継承するとなると、移住することになりますが移住に関しては心配なことなどはありませんでしたか?

渡邉さん:新卒の頃から異動も何度か経験しましたし、移住について心配なことはありませんでした。ただ田舎と都会でのギャップというのはやはりあるので、慣れるまでは大変でした。

編集部:どんなギャップがありましたか?

渡邉さん:思った以上に交通の便が悪いことです。都会に行くとなると車で2時間半の広島が一番近いんですよ。大阪だと飛行機で1時間、東京は 1 時間 20 分で行けますが、コスト面が……。旅行感覚でたまに東京へ帰っています。ですが、私の中では交通の便の悪さに関して割り切ってしまっています!もう気にはならないです。今の環境を楽しもうと思えば、自然と楽しいものになっていくと思います!

編集部:確かにないものにフォーカスするよりも、今あるものにフォーカスして、楽しもうとすることが重要そうですね!島根に移住して良かったことはなんですか?

渡邉さん:島根県は薬学部がないので、薬剤師の確保が難しい環境なんです。素晴らしい薬剤師さんが沢山いるのですが、中にはその資格にあぐらをかいてしまっているのかな?という人もいたり……。
そういった状況の中でいくと、私は東京や宮崎、茨城での経験があります。異なる地域において様々なニーズに触れる中で培った接遇やスキルといったものが活きていて、それを評価してくださる方も多くいました。そこが移住してよかったと思った点です。その他としては、自然が多いからか気持ちに余裕をもって働くことができていることですね。

編集部:仕事のことで評価されるのはやはり嬉しいですよね。仕事以外のことで移住してよかったと思うことはなんですか?

渡邉さん:まずは都内よりも広い家に安く住めること。次に自然が豊かなこと。私は特に海辺の景色がお気に入りです。以前は仕事前の早朝や休日にサーフィンをしていた時期もありました。今はもっぱら筋トレにはまっていますが、東京のようにジムは混雑していないので比較的自由にトレーニングができます。あとは食べ物がおいしいところです!海鮮や島根和牛など、どれも美味しいですが、個人的にオススメは出雲そばです!

編集部:出雲そば!少し黒っぽいそばですよね。普通のそばよりも香りがいいとか。食べてみたいです!!おすすめの観光スポットはありますか?

渡邉さん:まず外せないのが、日本最古の歴史書「古事記」にも出てくる古社で縁結びの神様として有名な出雲大社ですね。荘厳な雰囲気を味わうことができます。女性は特に好きなのではないかなと思います。そして世界遺産の石見銀山。こちらはレンタサイクルができて、街並みを楽しみながら観光することができますよ!
あとは、夏の風物詩の花火大会「水郷祭」です。湖上から打ち上げられる1万発の花火は圧巻です!

季節問わずに見ることができるサンセットは、疲れた時は海辺に座ってボーっとしているだけでも癒されます。都会ではなかなか見ることのない星空もオススメです!

島根県のサンセット

継承しつつも時代の変化に合わせた対応を

編集部:薬局を継承して3年目が始まったそうですが、勤務薬剤師から経営者となり色々なことが変わったと思います。心境の変化について教えてください。

渡邉さん:経営者になってからは経営視点と現場視点の二視点でものを見るようになりました。どちらかに偏ってはいけないし、バランスをとる必要があります。前オーナーは「心安く寄っていただける場所」もモットーに 50 年間営んでこられました。私はこれまで十数店舗の調剤薬局を経験してきましたが、新崎薬局のような患者さんとの距離が近いお店は初めてです。私はこのレガシーを継承しつつも、同時に若い世代のニーズにフォーカスをあてた経営も行っていきたいと考えています。
具体的には、LINEをコミュニケーションツールとして積極的に活用し、なるべく待ち時間を出さないようなオペレーションを目指しながらも、気軽に立ち寄っていただける場所というのを変わらず続けていきたいです。

編集部:システム導入以外に始めた取り組みはありますか?

渡邉さん:物事を決める際は、調剤事務と薬剤師という職種に関係なく、自由に意見を出し合いみんなで検討していくようにしています。とにかくまずはやってみるということも大切にしてます。問題があれば修正していけば良いので。

編集部:最後に、今後の展望と移住を考えている方にメッセージをお願いします。

渡邉さん:会社は第三期目に入りました。今後は店舗を拡大していきたいと思っています。加えて、近隣から在宅医療の相談もいただいているので、薬剤師を採用してそちらにも取り組みたいです。
移住に関してですが、現状を変えたいと思っている方はまずは行動してみましょう!人生は一度きりなので、まず挑戦してみるのが良いと思います!移住が合わなければまた戻れば良いと思いますし、他の場所を探せばいいと思いますよ。移住の選択肢の中に島根県があれば嬉しいです!

【プロフィール】渡邉貴大/薬剤師 東京薬科大学卒業後、東京の調剤薬局に勤務。その後地方に異動し2022年に新崎薬局を継承し、代表を務める。

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