移住をするメリットのひとつとして、「生活コストの削減」が挙げられます。特に家賃は、地方と都市部で大きく差があるため、魅力に感じる方が多いのではないでしょうか?
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、都道府県別1カ月当たりの平均家賃は東京都が88,295円と最も高く、最下位の鹿児島県との差は2倍以上です。2位の神奈川県との差も、約16,000円と大きく開いています。生活エリアによって、金銭的な差が生じていることがわかります。

さらに薬剤師の場合、地方は都市部よりも年収相場が高いため、実質的な収入アップが叶います。引っ越し費用の負担や住宅補助といった制度も、地方の会社のほうが充実しているケースが多いです。
それでは薬剤師にとって、年収が高く、家賃が低い地域はどこなのでしょうか?
各地域の家賃や年収相場とともに、薬剤師の移住先におすすめの都道府県をご紹介します。
上がり続ける都市部の家賃!地方の家賃相場はどのくらい?

まずは、都市部と地方の家賃相場について具体的にみていきましょう。上記で紹介した通り、首都圏や関西をはじめとする都市部の家賃は高騰が続いています。
地価も同様の傾向で、国土交通省が発表している2024年7月時点の「基準地価」によると、東京・大阪・愛知(名古屋)の三大都市の地価は2021年から3年連続で上昇しています。

東京圏では4年連続で上昇と、都市部の住宅は一般的な家庭で購入できる水準を超えてきています。ファミリー層は郊外に流れていく傾向があり、都市部周辺のマンションや戸建ての需要が高まったことにより、さらに上昇幅が拡大しているようです。
一人暮らしの方だけでなくファミリー層にとっても、負担が大きくなっている住宅費。つぎに、各地域の物件情報をもとに、シングル向け物件とファミリー向け物件の地域別家賃相場をまとめてみました。

※LIFULL HOME’S 家賃相場の物件情報より筆者作成
※シングル向け=ワンルーム~2DK、ファミリー向け=2LDK~4DKで算出
どちらの物件とも、東京が堂々の第1位で、シングル向け物件でも10万円を超えています。最も低い地域は四国地方で、シングル向け物件は5万円を切っている状況です。ファミリー向け物件では、東京と四国の差は約3倍となっています。
シングル向け物件で4位の東海地方(静岡・愛知・三重・岐阜)は、名古屋市の家賃が高騰しているため、やや高めの順位となっています。
九州地方も福岡県と沖縄県(那覇市)の家賃が高いため、順位を押し上げていますが、熊本県や長崎県など残りの九州地方では、四国地方と同水準の低さです。
中間層の北関東、北陸、甲信越、中国地方はそれほど家賃に差はありません。この中から移住先を検討する際は、その地域の特徴や求人の募集状況をみて選ぶのがよさそうです。
都道府県別薬剤師の年収ランキング
つぎに、薬剤師の都道府県別年収ランキングをみていきます。データは、「薬剤師の年収とお金の都道府県ランキング」の記事から参照しています。こちらの記事では、薬剤師の年収だけでなく、経済的な豊かさランキングについてもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

1位は宮崎県で、同じ九州地方である鹿児島県も9位につけています。福岡県を除く九州地方では、薬剤師が不足傾向にあるため高年収が期待できます。家賃が低い地域でもあるため、生活水準が上がり余裕のある暮らしができそうです。
北関東の栃木県と群馬県も、高年収が狙えるエリアです。他の地域に比べて都心へのアクセスもよいので、移住へのハードルが低くなるのではないでしょうか。
上位10位以内に、中国地方の広島県、鳥取県、島根県がランクインしています。広島県は中国エリアの中心地ですが、比較的高年収が狙えます。年収と家賃相場の両方を考慮すると、地方部である鳥取県や島根県のほうが移住のメリットは感じられそうです。
高年収×低家賃!薬剤師におすすめの移住地域
全国の家賃相場、薬剤師の年収ランキングを踏まえ、薬剤師の移住先におすすめの地域をまとめました。
秋田県

東北地方で薬剤師の年収が最も期待できるのは、秋田県です。
人口密度の低さは北海道に次いで全国2位!自然豊かな広々とした環境で、ゆったりとした暮らしができます。宅地価格が全国平均の3割以下と低いことから、マイホームを所有している人も多いです。
南北に広がる土地で、地域によって気候や文化に特徴があります。
県北エリア(大館市、能代市など)
白神山地や十和田湖など、ありのままの自然を楽しめます。畜産も盛んで、きりたんぽ鍋や秋田犬が有名なエリアでもあります。
県央エリア(秋田市、由利本荘市など)
県内の中心地で交通の便がよく積雪も少ない地域です。男鹿半島や鳥海山などの自然と産業が共存しています。
県南エリア(横手市、大仙市など)
県内有数の豪雪地帯です。稲作が盛んなため、酒蔵も多いエリアです。日本三大花火大会である大曲の花火や田沢湖なども有名です。
秋田県移住・定住総合ポータルサイト「”秋田暮らし” はじめの一歩」
群馬県

認定NPO法人ふるさと回帰支援センターによる「移住希望地ランキング(2023年)」で群馬県は、セミナー参加者で1位、窓口相談者で2位に選ばれています。
一般的にも人気の移住先ということですが、先ほど紹介したように高年収地域で家賃も安価なため、薬剤師の移住先としてもぴったりです。
群馬県北部は標高が高い地域が多いため、夏は避暑地として有名ですが、関東平野が広がる南部は非常に暑く、前橋市や館林市などはニュースで取り上げられるほどです。冬は”空っ風”と呼ばれる冷たい季節風が吹いているため、乾燥を感じやすい気候です。
東京から1時間半前後の立地で住宅街も多いですが、山に囲まれているため、キャンプや登山などのレジャーも楽しめます。物価が安く家賃も低いため、都市部と比べると生活費がかなり抑えられます。地震などの自然災害も少ないとあって、ファミリー層からの人気が高いです。
群馬への移住を考える人のためのライフスタイルWEBマガジン「ぐんまな日々」
静岡県

首都圏や中部地方、関西地方にもアクセス抜群な静岡県。平日は静岡で働き、週末だけ都市部に帰って過ごすという生活も可能です。山、川、湖といった自然も豊かで、太平洋に面して長い海岸線があるため海水浴場が多く、サーフィンを楽しむ人など、多くの人で賑わっています。
静岡県は大きく4つの地域に分けられ、地域によって、郊外の生活や地方都市での生活と異なるライフスタイルが楽しめます。
伊豆地域(熱海市、伊豆市、下田市など)
温泉などがあり観光地としても人気のエリアです。利便性はやや欠けますが、海や山、川などの自然の中で生活できます。
東部地域(沼津市、三島市、富士市など)
富士山が近いこともあり、天然水によって育てられた食材が豊富です。登山やキャンプ、ゴルフなどアウトドア派の人にもおすすめです。
中部地域(静岡市、島田市、焼津市など)
静岡県の中心地で、新幹線や高速道路、空港もあるため利便性が高いです。南アルプスから駿河湾まで、自然環境も兼ね備えたエリアです。
西部地域(浜松市、掛川市、磐田市など)
中部や近畿地方へのアクセスが良好で、浜松市の遠州灘や浜名湖ではマリンスポーツや釣りが楽しめます。田園地帯があるため、のどかな田舎暮らしも可能です。
静岡県の移住・定住情報サイト「ゆとりすと静岡」
千葉県
千葉県も静岡県同様、首都圏に近く、マリンスポーツやアウトドアなどが楽しめる自然豊かな地域のため、移住先としておすすめです。詳しくはこちらのページで紹介しています。
島根県

島根県の住島根県の住宅地価格は東京圏の10分の1以下です。薬剤師の年収も高水準ですので、資金アップが実現できます。人口減少に伴い空き家が増加していることから、古民家をフルリノベーションして自分なりの家づくりといった楽しみ方も可能です。
東西に細長い地形に沿って海岸線が伸び、北部の日本海には隠岐諸島が位置しています。
隠岐地方の他に、県庁所在地の松江市や出雲市からなる出雲地方、石見銀山で有名な大田市がある石見地方の3つに分かれています。
移動手段は自動車がメインになりますが、都会では感じにくい四季折々の自然を身近に体験することができます。
気候は比較的温暖で、降水日数と降水量が多く年間を通じて湿度が高めです。空気中の水分量が多く、肌へのストレスが少ないため「美肌県」とも呼ばれています。
実際に島根県へ移住した薬剤師の方にインタビューを行いました。こちらの記事もぜひご覧ください。
香川県

日本一小さい面積の香川県は、高速道路で約1時間で横断できるほどの広さです。「コンパクトシティ」と呼ばれるように、コンパクトな街の中に交通網や商業施設、都市公園など暮らしやすい環境が整っています。本州とは瀬戸大橋で繋がっているため、電車やバス等で気軽にアクセスできます。
1年を通して日照時間が長く降水量が少ない、瀬戸内特有の温暖な気候が特徴です。県内のおよそ半分を讃岐平野が占めていて、移動手段として自転車を利用する人も多いとか。
1世帯当たりの預貯金残高は全国トップレベル。持ち家比率が高く、世帯員1人当たりの居住室面積も広いため、のびのびと過ごせる環境です。
かがわ移住ポータルサイト「かがわ暮らし」
鹿児島県

鹿児島県内の約40%が暮らす鹿児島市を中心に医療機関が充実しています。人口当たりの病院数は全国トップクラスです。
比較的温暖な気候で暮らしやすく、南北約600キロメートルの広大な県域の約30%は種子島、屋久島、奄美群島などの離島で構成されています。離島の薬剤師求人は募集枠が限られていますが、好待遇で働ける可能性は高いです。
東は太平洋、西は東シナ海、中央には錦江湾と、離島以外の地域でも海が近いので、サーフィンなどのマリンスポーツも人気です。
実は温泉の源泉数が約2700本と全国2位を誇る鹿児島県。県内の各地で天然温泉を利用できます。
黒豚やクロマグロ、黒糖など「黒素材」と呼ばれる食材も魅力です。名産品を使った郷土料理が豊富で、都市部にはない食文化が楽しめます。
鹿児島県移住・交流ポータルサイト「かごしま移住ネット」
移住支援・補助制度を活用しよう

移住をする際、引っ越しや転職が必要になる場合がほとんどかと思います。収入を増やすための移住なので、出費はなるべく抑えたいですよね。高齢化に伴い人口減少に悩んでいる地域が多いため、移住者を支援する制度が用意されていることがあります。これらの制度を上手に活用していきましょう。
各市区町村の支援制度の詳細については、公式サイト等で最新情報をご確認ください。
・移住支援金
地方創生移住支援事業の一環として、地方自治体が主体となって実施している支援金制度です。細かな条件は地域によって異なりますが、東京圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)からの移住が対象になるケースが多いです。適用された場合は、30万~100万円程度の新生活資金が得られますので、移住希望先の支援金実施状況を調べてみることをおすすめします。
・住宅に関する支援制度
新築住宅や空き家等の中古物件を購入した場合など、定住を目的とした住宅費用に対する奨励金「定住促進奨励金」やリフォーム支援金、家賃補助など、移住を後押しする住居支援制度が用意されていることもあります。
また、薬剤師が移住に伴い転職をする場合、引っ越し費用や住宅補助付きの条件で転職できることが多いです。都心部の会社でも住宅手当等を出している場合もありますが、地方の会社では貴重な薬剤師人材の確保のため、こういった福利厚生の充実や提示年収が高くなる傾向があるのです。
・仕事に関する支援制度
就職、転職、起業に関わる資金援助やマッチング支援、新たに農業を始める人向けに新規農地の紹介、各種講習会の開催などを行う「就農サポート」などがあります。
薬剤師の場合、遠方の地域に自己応募で転職活動をすると、求人探しや面接調整が難航しがちです。また、都市部と地方では年収相場に差がありますが、把握せずに転職をしてしまうと損をしてしまうこともあります。
そのため、転職エージェントを利用するのがおすすめです。専門のコンサルタントに任せれば、その土地の年収相場を把握した上で、経験や希望条件をもとにベストな求人を紹介してもらえます。全国の求人から移住先にぴったりな地域を勧めてくれることもありますので、ぜひ利用してみてください。
”移住薬剤師”になってみませんか
皆さんはどこの都道府県が気になりましたか?薬剤師の皆さんにとって、地方移住はたくさんのメリットがありますので、ぜひ一度検討してみてください。
近年、各地域の地方自治体で移住や定住を促進する動きがあり、専用サイトが作られたり、移住希望者を対象にした取り組みが行われたりと、移住市場は盛り上がりをみせています。各市区町村の移住関連情報については、下記サイトにまとめられていますので参考にしてみてください。
地図から探す!日本全国移住関連情報リンク集(いいかも地方暮らし)
このサイトでも引き続き、”移住薬剤師”に役立つ情報を発信していきます。